洒落にならない怖い話まとめぽぽぽ・・・

怖い話にはいい話もあるんだよ?

【母の暖かさ】「人のためになることをしろ」と子どもに教えてきた母がいざ最終同意の段になったら、ものすごく険しい顔で心配しだした。

うちの母は、小さい頃から「人のためになることをしろ」と子どもに教えてきたのよ。

だから、大人になってなんの疑いもなく骨髄バンクに登録したんだ。

知らせたら「それはいいことだね。いつか提供できるといいね」と言っていた。

 

で、ドナーに選ばれてさ。

「その人が元気になれるといいね。登録しててよかったね」

と母は言っていたわけよ。自分でもそう思ってた。

 

ところがですよ。いざ、提供の最終同意の段になったら、ものすごく険しい顔で

「心配なんです。後遺症が残るんじゃないか、本当に無事に終わるのか」なんて言い出した。

何言ってんだよ。俺が登録するって言った時も、ドナーに決まったって言った時もずっと賛成してたじゃんか。喜んでたじゃんか。

 

そう言ったら、言うわけよ。

「心配なんだよ、親なんだから。お前が心配しなくていいって言ったって、親なんだから心配するんだよ!」

だから、俺は言ってやった。

「極当たり前に、人のためになることをしようと思えるように俺を育てたのは母さんたちだろう。心配ないよ、絶対大丈夫だって」

それで、提供の入院するときも、完全看護なのに毎日見舞いに来てくれてさ。

いらないって言ってるのに、心配だから行くんだって怒るんだよ。

まったく、勝手だよな、親ってさ。

 

で、無事に骨髄採取してさ。そしたらさすがにショックで血圧下がって、氷みたいに体が冷たくなっちゃってさ。

電気毛布とかかけられて寝てるとき、母が手を握り締めてきて、言うのよ。

「無事に終わってよかったね」

手が、ものすごくあったたかった。 きっと、あのあったかさは忘れない。