洒落にならない怖い話まとめぽぽぽ・・・

怖い話にはいい話もあるんだよ?

固芥さん(コケシさん)

582 名前:r-chu ◆rPiM0h0rok 投稿日:02/10/15 23:45
こんばんわ。 
コケシの話が怖いみたいですね。 

あんまり自分の出た地域のことは言いたくないんですけど… 

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私の田舎ではコッケさんといって、 
コケシのような呼び方をすると大人にそうとうおこられました。 
中学生に上がりたての頃、 
半端なエロ本知識で「電動こけし」という単語を知った 
クラスの友達が、コケシコケシと連呼してるのを、 
指副担に見つかり、バカスカ殴られてました。 

大学に入って初めて知ったのですけど、指副担(シフクタン) 
なんていう役職はほかの地域にないんですよね。 

あ、指副担というのは、生活指導副担という意味で、 
別に何の教科を担当してたわけでもないです。 
野球部のコーチみたいな感じで、毎日学校には出てくるのですが、 
だいたい用務員室で茶飲んで定時前には帰るような感じでした。 

学校行事の中で、踊りみたいなものは、指副担の先生が 
指揮をとってました。 

運動会で、必ず、メイポールの祭りみたいな踊りを、 
伝統的にやらされてたのですが、 
これは、指副担の先生の独壇場でした。 
列が乱れたり、ポールから引いたリボンがたるんだりすると 
怒るような。組体操よりぜんぜんこっちが大事でした。 

体育教師の数倍ヤな感じでした。 
584 名前:r-chu ◆rPiM0h0rok 投稿日:02/10/15 23:45
高校に入って、地元の青年会に入ると、コッケさんの 
あらましは聞かされるのですが、それもまぁ、 
コッケさんという地神さんは伝統だから、 
行事は守らないといけない、みたいな感じの話で 
要領を得ません。 

地域に大きな寺社や宗教施設がないし、 
中学高校にもなると、さすがに、 
いろいろヘンなうわさが立ってました。 

・**中学の裏にある井戸が本尊で、毎年一人生贄にされる 
・高校出て町に出るときは井戸に後ろ髪を納めさせられる 

噂は噂でしたけど、実際私がいたころは後ろ髪を伸ばした 
奴が多かったです。単なるヤンキーだったのかもしれない 
ですけど。今は帰らないのでどうかわかりません。 

今、同郷の女の子が近くのマンションに住んでて、 
そのこの叔父さんが指副担やってたんですけど、 
このスレで、コケシの話題が出てたので、 
なんか関係ありそうだったので、聞いてみました。 

* 
587 名前:r-chu ◆rPiM0h0rok 投稿日:02/10/15 23:47
* 

私たちがコッケと読んでいるのは「固芥」と書くらしいです。 

明治に入ってすぐのころ、飢饉と水害の土砂崩れで、 
村が、外部との交通が遮断されたままひと冬放置された 
ことがあったそうです。 

十二月二十八日のこと(旧暦かどうか不明)、 
知恵の遅れた七歳の子供が、村の地区 
(どの地区かは教えてくれませんでした) 
の備蓄の穀物を水に戻して食べてしまったそうなのでした。 

その子供は村の水番が、妹との間につくった子供で 
(本当かどうかはわかりませんが、 
水車小屋のような場所があったので 
すぐそういう、性的な噂が立てられた) 

水番が罪を犯すと翌年は日照りになるという 
迷信がまだ残っていました。 

水番は責任感が強かったので、 
子供を殺して村に詫びようとしたそうです。 
588 名前:r-chu ◆rPiM0h0rok 投稿日:02/10/15 23:47
実際「子供を殺せ」と書いた無記名の手紙を投げ入れる ような嫌がらせが、すぐ始まったそうです。 水番に不利に扱われていた家も多かったし、 実際、穀物の管理責任は水番にあるので、 そういうのがおきても仕方ない状況ではあったそうです。 年明けて、一月二十八日の深夜、 いくら何でも水番が自分の息子を殺すのを容認は できませんので、このことは村全体で考えよう、 と談判していたところだったのですが、 水番の妻が泣きながら世話役の家に走りこんで来て、 亭主が首を括ったので来てくれ、と言うのです。
589 名前:r-chu ◆rPiM0h0rok 投稿日:02/10/15 23:48
水番の家に行くと、井戸の上に「井」の字に竹を渡して、 
そこから首を吊るすようにして絶命している水番がいました。 

あまりの酷さに世話役たちが顔を背けていると、 

くだんの息子が、傍らから、世話役の袖を引いて、 

「みましたか! みましたか!」 

と、目をらんらんと輝かせて尋ねるのだそうです。 

この子はもはや正気ではないとはわかっていました。 

が、当時の解釈では、 
これは、水番の相反する気持ちが、 
子の魂は滅ぼしても子の肉体は母のために 
生かしておいてやりたい、という願いになり、 
親子の魂が入れ替わったのだ、というのが支配的でした。 

間引きのために子供を殺したことはありませんでしたが、 
このとき、村で初めて、 
この子供を「殺そう」という結論が出たのだそうです。 
591 名前:r-chu ◆rPiM0h0rok 投稿日:02/10/15 23:49
横糸を斜めに織った長い綿布で首を包んで、 
布に少しずつ水を吸わせて、誰も手をかけないうちに 
殺そうということになりました。 

しかしそこは、素人考えですので、 
首は絞まってもなかなか絶命しません。 
子供は父と同じ顔で「誰じゃ、食ったのは誰じゃ」 
と声を上げていました。 

592 名前:r-chu ◆rPiM0h0rok 投稿日:02/10/15 23:50
恐れおののいた村人は、父が死んだのと同じように、 
井戸に竹を渡してそこから子供を吊るしました。 

ものすごい形相でにらむので、 
まぶたの上から縦に竹串を通しました。 

子供は、数日、糞便を垂れ流して暴れたのち、絶命しました。 

その明けた年は、飲み水から病気が発生し、 
多くの人が命を失いました。 

さらに、本当に穀物を食ったのが、この子供ではなく、 
世話役の十三になる子供だったことがわかったのだそうです。 
このとき、世話役は躊躇なく、 
わが子を同じ方法で吊るしたのだそうです。 

あくる年の一月二十八日のことだそうです。 
593 名前:r-chu ◆rPiM0h0rok 投稿日:02/10/15 23:51
* 

「というわけで、一月二十八日はコッケさんの日になったんですよ」 

「はー、なるほど。命日なわけな」 

うちで飯を食べてもらいながら、彼女(指副担の姪っこ)に、教えてもらいました。 

「だから固芥忌(コケキ)っていうのが正しいんですよ。」 
594 名前:r-chu ◆rPiM0h0rok 投稿日:02/10/15 23:51
「運動会の行事も、意味わかると、ひどいね」 

「…村人全員で子供をシめる儀礼ですからね。本来こういう形でやさしく弔ってあげたのに、という。偽善ですよね」 

「うん」 

(運動会の踊りは、メイポールの祭りに似てますので、知らない人は検索してもらうとどういう形なのかわかります。中央のポールが子供です) 
595 名前:r-chu ◆rPiM0h0rok 投稿日:02/10/15 23:52
「…あとですね、これ、私一人で気づいたんですけど」 

彼女は、ペンを取って、チラシの裏に、「芥」の字を書きました。 

「おお、28やん。オレも今気づいた」 

くさかんむりと、その下の八の字で、二十八と読めます。 

「え?」 
彼女はきょとんとしていました。 

「いやだから、にじゅうとはちで、その命日を表してるんでしょ?」 

「…ほんとだぁ」 

「え、違うの?」 

「いや、そっちが正しいんですよねたぶん」 

「何よ、教えてよ」 

「いや、いいです」 

しばらく押し問答した末、彼女は折れて、文字を書き足しました。 

「これね、縦書きなんですよ」 
596 名前:r-chu ◆rPiM0h0rok 投稿日:02/10/15 23:53
固 
芥 


「目をつぶされた子供が、 
竹の枠に首から下がってるの、わかるでしょ?」 


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以上